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卒論は自分の専攻分野のものを書いたが、勉強し直して、プログラマーになれたらなりたいと言う。
この息子が、私のパソコンの先生だ。
大学を卒業してからアメリカ留学前の数カ月、久しぶりで家にいる。
妻も生徒になって、パソコンを始めた。
長女も仕事の関係もあって、パソコンを使い始めている。
本を読むきっかけは、中学のとき、息子が、私の友人から将棋の本をドサッともらったときだ。
一人で本を読んで将棋の腕を上げた息子は、副産物として本を読む習慣を獲得した。
黒崎政男(くろさき・まさお)1954年仙台市生。
主著に「哲学者はアンドロイドの夢を見たか一人口知能の哲学」「ミネルヴァのふくろうは世紀末を飛ぶ」など。
1パソコンで『別な何者」かにおそらく息子は、まだ「何者でもない」(ノウボディ)が、「何者」(サムボディ)かになろうとしている。
パソコンというメディア(媒介)を介してだ。
しかし、パソコンは、単なるメディア(道具)ではない。
思考する機械である。
息子が最初に出会った本が、黒崎氏のものだったのは幸運だった。
(最初に出会ったのが将棋の本であったことも十分に幸運だった。
それは明断・判明を旨とする正真正銘の思考の技術の最もいいサンプルの一つだったからだ・)パソコンを「思考の道具」と考える、画期的な本だったからだ。
私は、すでに「何者」かである。
「大物」(サムボディ)という意味ではなく、すでに決定づけられた限界性のはっきりした存在であるという意味でだ。
しかし、五○歳になって、いま少し、異領域への転換をはかりたいと考えている。
はかり始めている。
「何者」かから「別な何者」かへの転換は、「何者でない者」から「何者」かへの転換より、ずっと難しい。
もちろん、まったく新しい者になるなどということではなく、別な何者かを付け加えるにすぎない。
だが、言うまでもないが、パソコンも、それに人間の頭脳でさえ、どんなにそれが素晴らしいものでも、過信したらバツである。
パソコンは、いながらにして世界と交通することを可能にした。
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